寺地はるなさんの『わたしたちに翼はいらない』の感想です。
あらすじ
同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。マンション管理会社勤務の独身――園田。いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。2023年本屋大賞ノミネート、最旬の注目度No.1作家最新長篇。
寺地はるな 『わたしたちに翼はいらない』 | 新潮社より引用
感想
心が弱ってるとき、孤独を感じてるときって、どうしてもだれかにすがりたくなる。言われたことに心動かされたり、感謝したくなったりして、相手に好感まで持ってしまう。そして、ことあるごとに話を聞いてもらいたくなる。この人なら、なんでも話せる、なんでも聞いてくれる、って気がして。
でもそれって、自分が勝手に都合のいいように解釈し、その人を勝手に救世主とみなしているだけだ。その人に依存してしまってるだけだ。
我々は友人だろうと、家族だろうと、そうじゃなかろうと、人間社会を営んでる以上は助け合って生きてはいるはず。助け合ってはいるけど、自分の意志を貫くのは、結局は自分しかいない。だれにも正解を求めてはいけない。愛情とか友情とか、そんなものにかまけて人に依存するのは違う。
でも、自分はこう思う、ということを貫けるなら、いいんだと思った。たとえ過去の傷をいつまでも抱いていても、誰かのことをずっと許せなくても。
なんか、世の中、「そんな昔のことは水に流してー」とか「前だけ向いてなさい」とか言うけど、昔にいじめられたり、ひどいこと言われたりしたら、そんな簡単に流せるわけねえよって思ってた。
いつまでも過去にとらわれて苦しんでる自分は、いじめられてたくせに時が経っても見返すどころか何者にもなれていない自分は、なんて価値のない人間だろうと。
この話を読んで、別にいいやって思えるようになった。確かに人間の悪意が出まくりで読むのはしんどかった。でも読み終わった後は、自分のことを少しは受け入れられるようになった。
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