【感想】『噛みあわない会話と、ある過去について』【目をそらしたくなる、他人事じゃなさ】

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感想

相手が何気なく放った一言を、一生忘れられないことがある。同時に、相手の心を傷つけてることってある。

この話を読んでる途中や、読み終わった直後は、いるよねえ、ずっと「アタシ悪くないもん! なに勝手に傷ついてんの?」みたいなスタンスのやつーって腹が立ったり、主人公を哀れに思ってしまったりしました。

けど……だんだん時間が経って、この話を振り返るにつけて、そうした自分の態度を反省しました。

だって、わたしも絶対、この短編の主人公たちと同じことをしているだろうから。

あらすじ

辻村深月さんの『噛みあわない会話と、ある過去について』の感想です。

まずはあらすじから。

あなたの「過去」は、大丈夫?

美しい「思い出」として記憶された日々――。
その裏側に触れたとき、見ていた世界は豹変する。
無自覚な心の内をあぶりだす「鳥肌」必至の傑作短編集!

大学の部活で仲のよかった男友達のナベちゃんが結婚するという。だが、紹介された婚約者はどこかズレていて――。
「ナベちゃんのヨメ」

国民的アイドルになったかつての教え子がやってくる。小学校教諭の美穂は、ある特別な思い出を胸に再会を喜ぶが……。「パッとしない子」

人の心裏を鋭くあばく傑作短編集!

噛みあわない会話と、ある過去について – 講談社BOOK倶楽部より引用

感想

どの話も、序盤は明るくて、どこにでもある日常という感じで、ある人に関する過去の話も一種の思い出話みたいに語られます。

そして当事者が現れることでその思い出が崩れます。

同じ過去でも、自分と相手で認識が違っていて、会話が嚙みあわない。

しかも、自分にとっては美しい思い出が、相手にとっては醜いものだったりして。

思い出話が、黒く塗りつぶされていくさまは、まるでジェットコースターみたいでした。

人は、過去を自分の都合のいいように解釈しているんだなあ、と。

自分の認識が絶対に正しいとは思っちゃいけない。

この小説は、簡単に言うと、過去に傷つけた側と傷つけられた側が逆転する復讐劇です。

かつては地味だった国民的アイドルとその過去を知っている先生、スクールカースト底辺の痛い子だった塾の経営者とそのクラスメイトで陽キャだった地方紙のライター、

真面目教の信者とも呼べるくらい厳しい母親と娘、かつていいように使われていた男友達と女子のグループ。

過去に傷つけられた側で描写されるのなら、この小説は痛快だったと思います。

しかし、過去に傷つけた側の視点で描かれてるのがこの小説のしんどいところ。傷つけた側が語り手になることで、わたしたちをその立場に置いてくる。

だから、しんどい気持ちになる。他人事じゃないような感覚になる。

わたしが抱いた、読書中、あるいは読後の、「ざまあみろ」とか冒頭のような他人事めいた感想は、目をそらしたかったからでしょう。

他人事じゃないような感覚から。傷つけられた側の放つ復讐の刃から。

おまえも同じことをしてないか。何の気なしに相手を傷つけていないか、と振り返ることから。

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