【感想】『夏に泳ぐ緑のクジラ』【厳しくてつらいYA小説】

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感想

村上しいこさんの『夏に泳ぐ緑のクジラ』の感想です。

あらすじ

孤独を好物にする“つちんこ”と少女の物語
母の離婚をきっかけに祖母の住む離島に預けられることになる少女。そこは、毎年夏になると家族で出かけた思い出の多い島だ。
複雑な思いをかかえて、島に降り立つと、
「シャッ、シャッ、シャッ、シャッ」
無気味な笑い声を立てて、つちこんこが、現れた。
「もしかしておいらのこと、見えてるのか?」

どこからともなくやってくる“つちんこ”。
「あなた、ナニモノなの?」
「うーーん、おいら、ナニモノなのか……」

孤独につぶれそうになっている子どもの前にだけ現れるのが、座敷童ならぬ“つちんこ”だ。

家族のことで不安な気持ちをかかえる少女と、うさんくさいつちんことの、不思議な物語。

夏に泳ぐ緑のクジラ | 書籍 | 小学館より引用

感想

……きつい!

もう、この一言ですよ。YA小説ということで、主な読者は中学生や高校生、はたまた小学生なのでしょうが、彼らが読むには救いがなさすぎる……苦笑

出てくる子どもたちがみんな孤独を抱えていて、一方、大人たちはクズやかわいそうな人が多いです。親につらく当たられた子どもは、また自分の子どもを不幸にしてしまう。子どもを愛せない親もいる。家族の病を背負っている子どもたちが、この世には確かに存在する。そんな現実を、この小説は突き付けてきます。

でも、わたしは好きです。正直、家族ってこんなもんだろって思う自分もいましたし。あとこの小説は、嫌な大人がうようよいる現実を突き付けてくるだけの話じゃないです。

「つちんこ」は、蝉を食べるわ、憎まれ口ばかり叩くわ、お京たちの不幸を笑うわ、「なんじゃこいつ!?」というキャラでした。

しかし彼は、確かにお京たちの味方でした。自分の人生の主導権を、他人に渡してはいけないこと、自分の人生は自分で決めることをお京たちや、ひいてはわたしに教えてくれました。

最後に消えてしまうのは、やっと愛されたからなんですね……。「つちんこ」だけじゃなくて、お京たち子どもやその親も、みんなが愛に飢えている物語でした。

ご都合主義なんて一切なくて、決してハッピーエンドとは言えないです。が、お京は新たな一歩を踏み出すことができたんじゃないか、という終わり方でした。

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