【感想】食堂かたつむり【命と食への感謝、愛情が詰まってる】

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小川糸さんの『食堂かたつむり』の感想です。

あらすじ

恋とともに何もかもを失い、そのショックで声まで失くした倫子は、ふるさとに戻り、小さな食堂を始める。お客様は一日一組。食堂は次第に評判を呼ぶように…。

([お]5−1)食堂かたつむり|ポプラ文庫 日本文学|小説・文芸|本を探す|ポプラ社より引用

感想

小川糸さんの作品に出てくる食材って、すごいこだわられてるんですけど、もうこのデビュー作からしてそうなんです。高級メーカーのお菓子、何か月も漬けられたキムチ、生地から手作りのパン……。ご飯の描写がおいしそうな作品とか、食事がメインの小説ってたくさんあるけど、特に小川糸作品がおいしそうなのって、そのためかなって。

材料が違うと、料理ってけっこう味が変わってくるじゃないですか、そんな感じで。

優しい文体や身近なものを使った比喩も相まって、全体的にあたたかい話。食堂ではたくさん奇跡が起こって、「よかったなあ」とほっこりする。だれかと美味しいご飯を食べたり、だれかのために料理をするっていいよなあ、と。

ご飯がメインの小説を読んでると、そういう感想はたいてい抱くんだけど、この小説では、さらに、命の大切さを改めて知ることができたり、愛情というもののぬくもりを感じることができた。「料理」というものは、自然によってはぐくまれた命と、その形を変える人たちの愛情があってこそ。

おかんへの印象が最初と最後で全然違う。不器用すぎる愛情に、涙。おかんだけじゃなく、最初むかつくと思う人たちも完全な悪者で終わらせないのが小川糸作品のいいところだと思う。読み終わったころには、みんな愛おしい。

あたたかさの中にちょっぴり涙のしょっぱさがあるスープのようなこの小説は、食べ——本で言うと、読み終わったあとでも、尊さを残してくれた。

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