藤崎翔さんの『逆転美人』の感想です。
ネタバレなしで感想をお伝えしますのでご安心ください。
あらすじ
「私は報道されている通り、美人に該当する人間です。でもそれが私の人生に不幸を招き続けているのです」飛び抜けた美人であるせいで不幸ばかりの人生を歩むシングルマザーの香織(仮名)。娘の学校の教師に襲われた事件が報道されたのを機に、手記『逆転美人』を出版したのだが、それは社会を震撼させる大事件の幕開けだった――。果たして『逆転美人』の本当の意味とは!? ミステリー史に残る伝説級超絶トリックに驚愕せよ!!
双葉社より引用
感想
ナ、ナンダッテー!?
トリックに気づいた瞬間、こう叫びそうでした。
この小説は、二部仕立てになっていて、香織の生い立ちが語られる前半と、その補足である後半に分かれています。
どうして補足が必要になったのか。それは、そこにこそ真実が語られているからです。
前半は、美人ゆえに散々な目に遭ってきた香織のエピソードがつづられています。
お風呂を覗かれたり、ねたまれていじめに遭って不登校になったり、騙されて愛人契約を結ばれそうになったり、仲がいいと思っていたバイト先の先輩からもひどいことを言われたり、ストーカー被害に遭ったり……
もう見てられなかったです。もうやめてよ、こんなのひどいよって心が引き裂かれそうになりました。
でもそんな香織も結婚し、子どもを設け、幸せな日々を送ります。
しかし、それも長く続きません。夫を亡くし、父を亡くし、娘は車いす生活になってしまいます。
そして、娘の高校の先生にレイプされかけてしまいます。
そんな、理不尽すぎる……とこっちまで絶望しました。
あまりに凄惨で悲しすぎる内容だし、なんだかまわりくどい言い方だしで、フラストレーションがどんどんどんどんたまっていきました。
しかし、あらすじの「ミステリー史に残る伝説級超絶トリック」が気になっていたので投げ出さなかったですが……正解でした。
後半の補足、つまり追記には驚くべきことが……。
ネタバレになるので詳しくは語りませんが、今までたまっていた感情がひっくり返るのを感じました。イライラとか悲しみとかが全部、驚愕に変わりました。
だからあんなまわりくどい言い方をしてたのか。
真相を知ってこの小説に隠された仕掛けを解いてからはどんどん読み進めちゃいました。
この小説は、驚きの仕掛けがあるだけじゃない、とわたしは思います。
考えさせられるところもあるんじゃないでしょうか。
この物語の全体のテーマは、ルッキズムです。
ルッキズムについて述べられているところを読むと、確かにな、と思う部分もありました。
作品内ではアナウンサーについて言及されていましたが、わたしは、声優を思い浮かべました。
声がよくて、キャラクターを動かすのに適した演技力があれば、演者の顔なんて関係ないはずです。
しかし、最近の声優はメディアの露出が増えており、軒並み美男美女ばかり。これはルッキズムの風潮なのかなあと、悲しくなりました。(個人の意見であり、声優やそのファンを貶める意図は一切ございません)
多様性が叫ばれている世の中、実力の中に顔の良しあしが含まれなくなるといいな、と思います。
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